<<目次>>

『ゆうびんやのくまさん』
『そらまめくんとめだかのこ』
『しろいうさぎとくろいうさぎ』
『パパ、お月さまとって!』
『月ようびはなにたべる?』
『パンやのくまさん』
『はらぺこあおむし』
『ぼうしのおうち』

『ゆうびんやのくまさん』
 (作・絵)フィービーとセルビ・ウォージントン (訳)まさきるりこ
 (発行所)福音館書店

 町で働くゆうびんやのくまさんのお話。
 くまさん以外はみんな人というのも不思議な世界。
 でもね、みんなから慕われているんだ。
 真面目に配達やゆうびんのお仕事をするので喜ばれているんだ。
 くまさんは自分のお仕事が大好きなんだね。
 雪の降るクリスマス・イブの日にもいつものように働いているんだ。

 この絵本の絵柄がとてもいいんだよ。
 くまさんのつぶらなおめめや可愛らしいユーモラスな仕草。
 町やくまさんのおうちの描写も細部まで凝って描かれているんだ。
 例えばくまさんのお部屋の壁にかけたある額の中の写真を見てみたら微笑んでしまうよ。

 お話はくまさんの一日を淡々と追っていくだけなのだが
 それがなんともやさしい気持ちにさせてくれるんだ。
 「あぁ、くまさんもがんばっているんだなぁ。ぼくもがんばらないといけないなぁ。」
 なんて思ったりしたんだ。

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『そらまめくんとめだかのこ』

 (作・絵)なかやみわ (発行所)福音館書店

 そらまめくんの遊び仲間はグリーンピース兄弟とピーナッツくんとさやえんどうさん。
 雨が降り続いていて外で遊べないのでみんな退屈してたんだ。
 次の日にやっと雨があがって、いいお天気。
 みんなで外に飛び出したよ。
 ぼくから見れば小さな水たまりも、そらまめくんたちから見れば
 大きなみずうみになるんだね。

 そらまめくんが水たまりのみずうみに落ちてしまった!
 でもそこで素晴らしくきれいな景色に出会ったんだ。
 そらまめくんはみんなを誘って、またもぐっていくんだ。
 もとは地面だったところにその水たまりのみずうみは出来ているので
 水の底にお花が咲いているのもごく自然なことだよね。

 さやえんどうさんが迷子になって困っているめだかのこを見つけた。
 そこである方法でめだかのこの家がある小川に運んでいってあげるんだ。

 絵本のどのページを開いてもやさしい緑色の世界。
 そらまめとめだかが水の中で話しているなんて、とても面白いなぁ。

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『しろいうさぎとくろいうさぎ』

 (作・絵)ガース・ウイリアムズ (訳)まつおかきょうこ
 (発行所)福音館書店

 いつも一緒に仲良く遊んでいるしろいうさぎとくろいうさぎ。
 その日も朝からぴょんぴょん跳びはねていたんだ。
 黄色いタンポポ、綿毛のタンポポ、ひなぎく、きんぽうげ、
 くろいちご(くろいちごってどんなんだろうね?)、クローバーなどなど
 紙面いっぱいに広がる森の奥深い風景。

 くろいうさぎは何をそんなに悩んでいるのか、遊んでいる途中や
 食事の途中でもたびたび悲しそうな顔をして考え込んでしまうんだ。
 しろいうさぎは心配しています。

 くろいうさぎはずっとずっとお願いごとがあったそうです。
 それはこれからもずっとしろいうさぎといっしょにいられますように
 というお願いごとだったんだ。
 つまりくろいうさぎからしろいうさぎへのプロポーズだったんだね。
 しろいうさぎは結婚することをとても喜びます。 
 二匹の結婚式には森の仲間達がぞくぞく祝福にやってきます。
 しろいうさぎとくろいうさぎは
 これからもずっと仲良く暮らしていくのだと思うよ。

 くろいうさぎくん、お願いごとがかなってほんとによかったね。

 絵の雰囲気がふわふわしていて、まるでフェルトの世界に迷い込んで
 しまったようです。ページをめくるごとに癒されます。
 淡い柔らかな色調の緑の毛布をそっとかけてくれるような感触。
 とてもやさしい気持ちになれる作品だと思います。

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『パパ、お月さまとって!』

 (作・絵)エリック・カール (訳)もりひさし
 (発行所)偕成社
*ボローニャ国際児童図書展・エルバ賞推薦

 ぶどう色の一軒家に住んでいるモニカという女の子。
 パパとふたりきりで暮らしているのかな。
 しまねこが家のまわりをうろちょろしています。
 ある晩のこと、モニカは青い夜空に浮かぶお月さまと遊んでみたい
 と思います。パパに抱っこしてもらって手をいっぱいに伸ばしてみても
 お月さまには届きません。
 「パパ、お月さまとって!」おねだりをしちゃいます。
 パパははりきってすご〜く長いはしごを持ってきて高い山に向かいます。

 山頂からはしごをつたってお月さままでたどりついたまでは
 よかったのですが、大きすぎて持って帰ることが出来ません。
 こまった、こまった。
 するとお月さまは「わたしは毎晩すこしずつちいさくなるから、
 ちょうどいい大きさになったところで持って帰るといいよ」と言いました。
 ほんとだ!だんだんと小さくなっていきます。
 パパが抱えることが出来るぐらいのお月さまになりました。
 それを大事に抱えて、またすご〜く長いはしごをおりていっていきました。

 念願だったお月さまを手に取ったモニカは大喜び。
 抱きしめたり、いっしょに踊ったりします。
 ほんとに楽しそうだなぁ、嬉しそうだなぁ。
 しばらくするとお月さまは消えてなくなってしまいました。
 どこにいってしまったんだろう?

 何日かしてまたモニカが夜空を見上げたところ
 同じお月さまがお星さまといっしょに浮かんでおります。
 そしてだんだんもとの大きさに戻っていきました。

 エリック・カールさんの絵本は楽しい仕掛けやアイデアがいっぱい。
 絵本の画面を上下左右に開いたりして、広大な夜空やお月さまの大きさを
 感じることが出来ると思います。
 貼り絵で構成されている画面もやさしい物語の雰囲気を如実に表しているし、
 貼り絵の醸し出すほどよい立体感が心地よかったです。

 そして「月の満ち欠け」という永遠のサイクルを易しく、
 それでいてとても優しく教えてくれているのだなぁ。

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『月ようびはなにたべる?』

 (作・絵)エリック・カール (訳)もりひさし
 (発行所)偕成社

 月曜日から日曜日までの毎日の食べ物をうたった
 アメリカのわらべうたなのだそうです。
 うたいながら見る絵本ということで、巻末に楽譜も
 付いていたりします。

 ページをめくっていくたびに、それはもうパワフルに
 元気の良い動物たちが飛び出してきます。
 あざやかな色彩の大胆な構図、躍動感に満ちていて
 見ているだけでもわくわくしてきてしまいます。

 月曜日ははりねずみくん。
 火曜日はへびくん。
 水曜日はぞうくん。
 木曜日はやまねこ(?)くん。
 金曜日はペリカンくん。
 土曜日はきつねくん。
 日曜日はさるくん。

 我慢しきれずに各曜日ごとに登場する動物たちを
 ばらしてしまいましたしたが、なにをおいしそうに
 食べているのかは秘密にしておきましょうね。

 結末ではハンデをもった子も健康な子もさまざまな人種の子も
 ひとつのテーブルについていっしょに日曜日の食事をしています。
 食堂の壁にかかっている七枚の絵を見てみたら、あら〜こんなところに!
 と、すこしびっくり。
 平等と友愛の精神をさらっと表現されているんだなぁ。

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『パンやのくまさん』

 (作・絵)フィービーとセルビ・ウォージントン (訳)まさきるりこ
 (発行所)福音館書店

 以前紹介したゆうびんやさんのくまさんと同じシリーズです。
 この本では題名のとおり「パンや」のくまさんです。

 街角にちいさなお店と配達用の黄色い車を持っているんだ。
 毎朝、太陽が顔をのぞかせないうちから起き出して
 かまどに火をいれてるのだね。
 それからパンのきじを練って、パンやパイやケーキを作るんだ。
 大忙し、大忙し。
 焼き上がったものをお店に並べたり、配達のために車に積み込んだり。

 くまさんはとても礼儀正しいので、街の人からも大人気。
 もちろんパンやパイやケーキの味も抜群。
 パンを作っているときのくまさんの顔を見てみると
 ほんとにパン作りが好きなんだなぁ、と思うんだ。
 自分の好きな仕事で、人が喜んでくれることが嬉しいのだろうなぁ。

 「パンや」のお話もくまさんの忙しい一日を
 順を追って紹介しているというだけなのですが
 くまさんの飄々とした立ち振る舞いを見ているだけでも楽しいのだなぁ。
 一日が終わって、ベッドで眠るくまさんの表情がとてもかわいいよ。

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『はらぺこあおむし』

 (作・絵)エリック・カール (訳)もりひさし
 (発行所)偕成社
*アメリカ・グラフィックアート協会賞受賞
*全国学校図書館協議会選定

この絵本の表紙を本屋や図書館で見たことのある人は
たくさんいるんじゃないかな、と思います。
白地にデカデカと緑色のあおむしくんがアーチを
描いているあの絵本ですよ。
ボードブックという種類の本で厚手の紙で製本されていて
角も丸くなっているところが、やさしいなぁ。

さて内容なのですが、エリックさんの色遣いと
大胆な構図には何度見ても感心してしまいます。
太陽とあおむしくんとの大きさや色の対比とかね。

題名どうりあおむしくんははらぺこです。
成長期なので食欲旺盛なのです。
月曜日にはりんご1個ですんでいたものが
土曜日にはチョコレートケーキやピクルスやサラミやら
その他もろもろ合計して10個も食べてしまいます。
そんなに食べちゃうもんだから、やっぱりおなかを
こわしてしまいます。
食べ慣れないものをたくさん食べるからだよね。
翌日の日曜日にはいつもどおり葉っぱを食べたら
おなかの調子はよくなったそうです。
このページの葉っぱのあおむしくんが食べたあとの
穴ぼこがとても面白いです。

いっぱい食べてまるまると太ったあおむしくん。
そしてさなぎになります。
どんな蝶になって現れるのでしょう。

幼虫から成虫になるまでの成長過程を愉快な展開で
教えてくれる物語なんだと思いました。

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『ぼうしのおうち』

 (作・絵)エルサ・ベスコフ (訳)ひしきあきらこ
 (発行所)福音館書店


 スウェーデンのお話です。
 湖の島に住んでいるトムテ(こびとたち)が織りなす物語。

 その島にひとりで切り株のおうちに住んでいる
 ひげの長いこびとのおじさんがおりました。
 そしてその近くにこびとのお母さんと三人のこどもたちが
 人間が忘れていった ぼうしのおうちに住んでいました。
 (こびとなのでぼうしのおうちでちょうどいいのです。)
 ある日、お母さんはこどもたちの洋服を編んであげようと
 思いたって、糸を仕入れに出かけることになります。
 三人のこどもたちには、出かけているあいだに良い子にして
 留守番をしていたら、ごほうびにハチミツクッキーをあげる
 約束をします。

 こどもたちはお母さんが帰ってくるまで良いことをしておこ
 うと思って、すすだらけだった煙突そうじをはじめました。
 煙突はきれいになったのですが、洋服はまっくろくろ。
 このままでは逆にしかられてしまうので、洋服をぬいで
 はだかのまんま湖にザブン。からだはきれいになったけど
 洋服は汚れたまんま。
 そこで、たき火をしてお湯をわかして洗濯をすればいいんだ
 という話になって、ぼうしのおうちのすぐそばで
 たき火をしてしまいます。
 パチパチパチと音をたてて燃えさかるたき火を見ていると
 こどもたちはとても楽しくなって、洗濯のことも
 お母さんとの約束のこともすっかり忘れてしまいます。

 だんだん炎は大きくなってきます。
 ぼうしのおうちに炎がせまっています。
 湖で魚釣りをしていたこびとのおじさんが炎のはげしさに
 びっくりしてかけつけます。
 おじさんとこどもたちでたき火を消すことには成功したの
 ですが、ぼうしのおうちは燃えてなくなってしまいました。

 こどもたちはお母さんにおしおきをされる、といって
 こわがっていました。その様子を見ておじさんは
 おしおきをされるのは当然のことだと説いていたのだけど
 シラカバの皮や枝を使った新しい丈夫なおうちを建ててあげます。

 お母さんが糸を仕入れて帰ってきて、おうちの様相が
 かわっていてびっくり。ことのしだいをおじさんは
 お母さんに説明してあげました。
 どうしてぼうしのおうちが燃えてしまったのかを話しました。
 お母さんはこれからのどうしていけばいいのかと落胆していました。
 そこでおじさんはこういうふうに言いました。
 「わしのおよめさんになればいい。そして、こどもたちに
 役に立つことをおしえてあげよう。」と。

 こどもたちにお父さんが出来るわけです。
 すこしおしおきはされましたが、ハチミツクッキーはもらえました。
 めでたしめでたし、ということ。

 僕にとっては意外な結末でした。まさか結婚しちゃうとは・・・・
 なんと結婚式の神父さんがモグラなんですよ、おもしろいでしょ。

 あたたかみのあるやわらかなタッチでトムテ(こびとたち)の
 ちいさなちいさな生活のようすがていねいに描かれています。
 とくに表紙のぼうしのおうちの絵柄は白いマグカップにプリント
 されていたら可愛いだろうなぁ、と思いました。


 (by S)

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